エアラインパイロット年収コラム別解説「賃金構造基本統計調査の読み方」

パイロット志望者の皆さまこんにちは!理事長・パイロット養成コンサルの冨村です。
このコラムは、エアラインパイロット年収コラムの中に出てくる「賃金構造基本統計調査」について解説するコラムです。
エアラインパイロットを目指す方にとって、統計を読み取る力も大切です。ぜひ、最後までお楽しみください。
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令和3年賃金構造基本統計調査が今年、2022年度も発表!
厚生労働省から、毎年春に発表されている、賃金構造基本統計調査。
2022年3月25日に発表された、同調査を参考に、パイロットの年収がどの程度変わったのか、男女比などを読み解いていきます。以下が、調査結果の抜粋です。
結論から申し上げますと、従業員の数が1000人以上の大企業に属する航空会社のパイロットは、約1063万円の平均年間給与となっています。
実は、昨年度の調査結果では、同じ欄(大企業に属する航空会社の55歳〜59歳パイロット平均年間給与額)が、2085万円とされておりました。
つまり倍近くも差が出てしまったことに当初はショックだったのですが、理由を調べるうちに、平均年間給与額は、さほど下がっていない、と言う結論に達しましたので、先に申し上げておきます。
コロナ禍ですが、全体的には、パイロットの給与はさほど下がっておりませんので、ご安心ください!
平均年収が下がった一番の理由ですが、賃金構造基本統計調査の方法にあると思います。
以下、厚生労働省から発表されている、当調査のQ&Aに書かれてます。
全国の常用労働者※5人以上の民営事業所及び10人以上の公営事業所から毎年無作為に選んでいます。総務省が管理する「事業所母集団データベース」を基に、都道府県・産業の種類・事業所規模ごとに区分し、必要な数の調査対象事業所をそれぞれの区分において無作為(ランダム)に抽出しています。抽出作業の際、機械的に処理されるため、特定の事業所を恣意的に選ぶことはありません。
つまり、今までの抽出方法に問題があったのか、逆に今回の抽出方法に問題が出たのかは、定かではありませんが、抽出された会社が昨年のものと、今年のものに違いがあると推察されます。
各社の年収を説明したコラムでも詳細を記述していますが、JAL(日本航空)やANA(全日空)の年収と、子会社やその他新興航空会社やLCCの年収、特に機長の年収には、差が出て来ています。
本来であれば、こうした差が生じないように、企業の規模毎に分類するのですが、従業員1000人以上の航空会社といっても、航空会社のくくりで言えば、JAL(日本航空)やANA(全日空)など大手航空会社から、LCCのジェットスターまで、幅広く含まれてしまいます。
令和2年の調査結果は、大企業の調査数(有効回答数)が2280件(人)であったのに対し、令和3年の調査結果は、1560件(人)と少なくなっており、無作為に抽出された事業所に所属しているパイロット数が、令和2年度と令和3年度では大きく違うこと分かります。
年収ランキングでは、順位に影響が出る結果となっておりますが、、、
安心してください!コロナが理由で給与が半減したわけではありません!
パイロットの年収ランキングは2021年まで1位!2022年は2位!後退した原因は?
パイロットの年収はここしばらく医師や法務従事者(弁護士等)を抑えて堂々の1位でしたが、今年はどうでしょうか?
結論から申し上げると、去年の調査と比べるとパイロットの年収は下がってしまっており、1位の座を想定年収約1378万円の医師に渡して、約1072万円で2位となっております。
先述の通り、賃金構造基本統計調査の方法「無作為に選ばれた事業所が異なる」が主な原因だと冨村は推察していますが、コロナによる運航便数が減少したことなど、他にも原因が全くないわけではないと思います。
前年度の調査ではパイロットの平均年間給与は1725万円となっており、医師の平均年間給与よりもだいぶ高い結果となっていました。
なぜコロナ禍とはいえ短期間でこんなにもパイロットの収入が下がってしまったのでしょうか?
去年と今年の表から読み解くと、「無作為に選ばれた事業所が異なる」以外にも、可能性が浮かび上がってきます。
可能性1:コロナ禍により受け取れるはずだった手厚い手当を受け取れなかった可能性
パイロットが高収入である理由の1つは「年間賞与その他特別給与額」(ボーナスや夜間時間外手当、海外宿泊手当など)の金額がかなり高いということです。
元々パイロットが不足気味であるため時間外手当(夜間や残業等)があったり、国際線乗務の場合は海外での宿泊手当などがあるため、「年間賞与その他特別給与額」は当然高くなります。
しかし、コロナ禍が始まってから便数は激減し、国際線便もほぼ飛ばなくなってしまうような事態になってしまったため、「年間賞与その他特別給与額」(1年間の合計)は去年の約252万円から今年の約91万円と大きく数字を落としてしまっています。
先述の「無作為に選ばれた事業所が異なる」のが原因だとすると、賞与や特別給与の基準も事業所(航空会社の大小)によって変わってくるため、やはりコロナ減便だけを原因とすることも間違っています。
可能性2:主に加齢乗員などベテランパイロットの早期退社
パイロットの平均月給は約82万円となっております。
この月給とは各種手当を含まない給与のことです。
去年までは120万円ほどありましたので、40万円ほども月給が下がってしまっている状態にご不安を感じられる方もいらっしゃることと思います。
手当が関係ない基本的な給与が大きく下がってしまっている理由は主に加齢乗員などベテランパイロットの早期退社ということが関係しているかも知れません。
加齢乗員とは、60歳を超えたパイロットのことで、60歳になってからさらに要件を厳しくした、加齢乗員用の航空身体検査基準をクリアすることで、最長満68歳までパイロットを続けているベテランのことです。
このベテランパイロット達ですが、昨年度の59歳までの平均額で見て、年収は3000万円以上となっており、このベテラン層がパイロットの給料の平均額を引き上げていた、ということになります。
大手で加齢乗員として勤務を続けるための航空身体検査は非常に難しいため、多くの60歳以上のパイロットは大手子会社やLCCといったエアラインに転職していきます。
(大手子会社やLCCの加齢乗員向け航空身体検査の基準が甘いわけではなく、大手は特別優秀な人材を残すためにとても厳しい基準にしています。)
この大手から子会社やLCCに移った加齢乗員が、先述した中企業の平均年収額を上げています。
3000万円ほど収入があった方に対して中企業だからと大幅に給与を下げるわけにはいきませんからね。
しかし、このコロナ禍で加齢乗員の契約を見送るエアラインがあり、早期に退職するベテランパイロットが増えましたことが、平均給与額を下げた原因のひとつになっているのではないでしょうか。
なお、国際線の旅客回復は遅れておりますが、国内線は2022年7月現在、コロナ前の水準に戻っており、会社によっては、コロナ前よりも運航便数が増加傾向であることから、新興航空会社やLCC各社においては、大手航空会社を退職していた加齢乗員に声をかけ始めたり、公募を再開する動きが出て来ておりますので、来年調査では、また年収が戻してくるのではないかと予想します。
パイロットの平均年収は今後回復するのか?
「無作為に選ばれた事業所が異なる」ことも含めて、これら原因によって、今年度の調査では大きく平均値が下がる=年収ランキングで2位に後退する、という結果になってしまいましたが、そうなった理由のどれもが一過性のものなので、収入状況は以前と同じ水準に回復する(実はもう回復している?)と期待しています。
因みに少し航空需要が戻ってきた今現在でも、現役パイロットは人手不足のためオーバーワーク気味で、皆疲労しています。
こうしたパイロット不足は日本だけでなく世界中でも起きているようで、全世界でパイロットの採用に力を入れる流れとなってきています。
よって今後の採用計画についても今までと変わらないどころか、ますます採用の幅は広がっていくものと考えます。
パイロットの年収で男女差がある理由
続いて男女比較をおこないます。
ご覧いただいた通りで、男女差が想像以上に大きい結果となりました。
男性パイロットの平均年間給与は、約1107万円に対して、女性パイロットの年収は、約413万円でした。
なぜこれだけ差がついてしまうのでしょうか
女性パイロットは、段々と増えて来ているとはいえ、今現在で全体の3%と推定されます。
この統計でも、男性パイロットが2680名に対して、女性140名(女性比率5.2%)となっています。
詳しくは、女性パイロットについて解説した以下コラムをご参照ください。
合わせて読みたい
冨村が勤めているPILOT専門進学塾・シアトルフライトアカデミーには、女性パイロット・パイロット候補生も多く在籍していますが、優秀な女性ほど、ワークバランスを考えながら、出産や子育ても両立しようとする傾向にあります。
性別に関係なく、仕事も育児も両立する今の時代ですから、男性パイロットであっても、育児中は仕事量を減らして、育児も両立させるべきだと私は個人的には考えますが、本人がそのつもりでも、会社だったり世間だったりはそれをなかなか容認しないこともあると思います。
結果、女性パイロットは、両立できたとしても、男性パイロットと比較して、フライトタイム(勤務時間)が減ってしまったり、場合によっては、機長昇格が遅れたりと、基本給以外の収入が減ってしまうことが原因ではないかと推察します。
だからこそ、女性パイロットには、子育ても家事も大好きな男性と巡り合ってほしいと願っています。
それに、今はまだエアラインが古い体質から抜け出られていないとしても、航空業界はこの国の中ではとてもリベラルな業界ですから、今の世界的流れに沿ってもっと女性が働きやすいような環境になってくると感じています。
実際にエアラインの経営陣はそうした必要性に気がついており、変革に力を入れようとしています。
今ある体質を変えることはとても難しいことですが、このコロナショックの数年間が体質を改善させる大きなチャンスであると踏んでいるようです。
まとめ
賃金構造基本統計調査から読み取るパイロットの年収コラム、いかがだったでしょうか。
新型コロナ蔓延というタイミングでもあったため、表面的に読んだだけでは、コロナショックでパイロット給与が半減か!?なんて見出しが踊ってもいいくらいでしたが、決してそんなことではないと冨村は読み取っております。
パイロット志望者の皆さまにとっては、年収の推移はとても気になるところだと思いますので、どうかご安心いただきたく思います。
日本のエアライン各社のパイロットはコロナ禍の今でも不足していて、増便にも対応しきれていない状況です。
国際線が回復してくれば、さらにパイロットは不足することでしょう。また、日本より早く回復を初めて来ている世界中では、日本より早くからパイロット不足が始まっています。
5年後、10年後にエアラインパイロットになっていることを考えたら、目の前のことだけに囚われてはいけない、ということがご理解いただけることと思います。どうか夢をコロナのせいにして諦めないでください!
以下コラムは、最新のデータを元に分析した、エアライン各社の給与(年収額)などが書かれています。ぜひ合わせてお読みください!
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追記
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また、3/24(金)の夜に、自社養成進路相談会(私大についても補足説明)を準備中です。
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パイロット適性診断テストのご予約は、パイロット相談室の「相談予約」にて承っております。
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2022年度合格速報
2022年度、PILOT専門進学塾・シアトルフライトアカデミー(PJ SFA)の私大パイロット養成コース(航空操縦)今年の合格者は・・・
- 崇城大学5名(パイロット特別選抜2名、一般選抜前期3名)
- 第一工科大学9名(総合型選抜6名、公募制推薦1名、一般試験2名)
- 法政大学1名(自己推薦)
計15名、全員合格
という結果でした!
またしてもPJ SFAの生徒は全員合格です!!(複数試験合格者含む)
皆さん本当によく頑張りました!
また、今年の崇城大学合格者の2名は未来人育成特待生制度「ミライクプレミアム」を勝ち取りました。
ミライクプレミアムは入試の得点率と成績順位に応じて選考される特待生制度で、ミライクプレミアムを獲得しますと学費が全額免除となります。
ミライクプレミアムに選ばれることは大変難しいことですが、生徒の並々ならぬ努力の結果、今年はPJ SFAから2名も選考をいただけることとなりました。
そして何より、私大のパイロット養成コース(航空操縦)は近年の受験者数増加により非常に難易度の高いものとなっていましたが、12名全員合格は非常に素晴らしい結果です。
生徒一人ひとりの努力が実ったこの結果にPJ SFAスタッフ一同大いに感動しました。
合格された皆さん、本当におめでとう!!