〜あの日見た飛行機雲〜 国際線機長40年の想い 第七章 天候=未知との遭遇6−3

「 雷 」 〜アメリカの蛍光灯〜

私は1983年~1985年まで、DC8-62でロサンゼルス=マイアミ(経由地)=サンパウロの路線を主に飛んでいました。

そんな1984年7月某日のことです。

ロスからの北米大陸横断は5時間以上かかり、アメリカの広さを実感していました。

ロスの空港を離陸して天候の良い時はHDG(進行方位)が管制から与えられ、航空路に関係なく全てレーダーでカバーされているので、2.3回変針するだけでマイアミ空港への進入経路まで誘導されます。

天気図によれば、その日はマイアミまでに前線帯が在って雲の上を超えるか隙間を探さねばならないと予想していました。

テキサスからルイジアナ辺りでしょうか。
東向きに飛んで居るので日暮れが早いのです。

薄暗くなってきた頃、前方の前線帯の雲の中でポッ,ポッと雷が光っていました。

「出来たら上を飛んで行こうか」FOと話してる間に前線帯に近づいて来てしまいました。

山脈のように白くうねった雲は高くそびえていて、とても越えられそうにありません。

ポッと光る雲はまるで蛍光灯のように横長に、前の雲を明るく光らせています。

操縦席のレーダーにも活発な雲を示す、中が空洞のドーナツ状を示しています。

「日本の雷はギザギザッとしているけど、大きな蛍光灯が横になってるね」

「メキシコ湾からカリブ海の方にデビエイト(航路逸脱)して逃げよう」

最初は60マイル(1マイル=1.8キロ)のデビエイトの許可を管制から貰って様子を見ましたが、前線の端が見えません。

さらに加えて100マイル以上になったでしょうか。
管制が「自分のレーダー範囲を超えるが未だ進路を戻せないか?」と言ってきました。

1,2分して前線の端と思われる雲の切れ目が見え、左に回り込もうとしたら反対側のマイアミ方面から来た航空機の灯りが、雲の山脈の麓を回ってくるのが見えました。

「彼らの来た方向に回り込もう」
やっと管制に新しい針路を貰えました。

「嬉しいですね、我々だけじゃなく他の航空機も同じ様に反対側から避けて来ていたなんて」

「我々と同じように判断していたのは嬉しいね」

「随分デビエイトして2,3分遅れるけど蛍光灯の中には入れないよ」

「地上は蛍光灯で明るいんですかね?」

飛行機に雷があたっても車と同じで、通常外側を伝わるので中に居る人は安全です。
ただそれなりの音と振動があって、それと分かります。

飛行機の主翼と尾翼の先には「スタテイックデイスチャージャー」といって静電気を逃がす鉛筆の芯のようなカーボンで出来たものが付いています。
これは静電気を逃がし、帯電を少なくして被雷を避けるようにしているものです。

雷は避けては通れない問題

私も40年の間にDC8,B767,B777で夫々1回、雷にあたった経験があります。

DC8では外板に数か所1.2mmの溶けた跡が残り、HFという長距離通信のアンテナの一つが駄目になり、10本位ある鉛筆の先の数本が無くなっていました。

B767ではやはり溶けた跡と一本の鉛筆の先が無くなっているだけで機器に影響はありませんでした。
B777では当たった箇所も、雷が出た跡もはっきり残っていないで、計器類にも影響がなかったように記憶しています。

冬の日本海側の飛行場に着陸しようとしていて、低い高度で続けて2回当たったと聞いたこともあります。

意外と低い雪雲の中には雷も潜んでいます。

夜間雲中飛行していて操縦席の前面のガラスに線香花火のように「パチパチ、ビリビリ」と蜘蛛の巣状に光ったり、レドーム(飛行機の先端黒い鼻状の部分でレーダーが中にある)の先から「めらめら」とまるで燃えている様な光が出ることがあります。

嵐の日などに船のマストの先端が光る「セントエレモの火」と同一現象のようです。

この様なときは、雲の中に帯電粒子が多い証拠なので“見とれている”ことなく、コースや高度を変えて「雷」を避ける算段をしなければなりません。

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