NICE FLIGHT!(ナイスフライト)ドラマ第3話 航空専門家による考察
パイロット志望者の皆さまこんにちは!理事長・パイロット養成コンサルの冨村です。
パイロット志望者お待ちかねのテレビドラマ「NICE FLIGHT!(ナイスフライト)」が、2022年7月22日(金)からテレビ朝日系列でスタートしました!
8月5日(金)は第三話が放送。副操縦士の倉田 粋(玉森 裕太)と、倉田 粋(玉森 裕太)が「一目惚れ」ならぬ『ひと聞き惚れ』してしまった、航空管制官の渋谷 真夢(中村 アン)の恋愛模様が、また一歩前進する奇跡的な(粋にとってツイている)展開です。
このブログでは、ドラマをご覧になられたパイロット志望者の方が興奮したであろう場面や、その詳細解説、実際の現場のお話などを解説する「パイロット目線 感想コラム」です。
一部ネタバレ等が含まれておりますため、本ドラマをご覧いただいてから、コラムをご覧いただくことをおすすめします。
TVerなどでも見逃し配信を行なっております。
NICE FLIGHT!(ナイスフライト)第三話のあらすじ 航空管制官という仕事の本質は?
第三話は、航空管制官という仕事の本質に迫るストーリーとなりました。
第三話のストーリーを振り返ってみましょう。
管制官訓練生である河原かすみ(玉城ティナ)が、実際にお客様の乗った航空機に対して初めて指示を出すという管制訓練中に、Boeing787をBoeing767と言い間違えてしまいます。
その後のデブリーフィング(訓練後の打ち合わせ)で「何百機の飛行機を無事にコントロールしても一言のお礼も無いのに、たった一度ミスしただけで総攻撃ですよ。
何が楽しくて管制官やっているんですか?」と仕事のやりがいに疑問を感じてしまう河原かすみ(玉城ティナ)。
かすみの指導役である航空管制官の夏目幸大(阿部亮平)から、「河原さんはなんで管制官を目指しているの?」と聞かれ、河原かすみ(玉城ティナ)は「航空業界は憧れで本当はCAになりたかったが、親から公務員ならばと言われて管制官を選んだ。この仕事に特に思い入れがない」と言ってしまう。
さらに後日、訓練中の河原かすみ(玉城ティナ)が担当した機体にバードストライク(鳥と航空機が衝突)が発生。
デブリーフィングの席で、夏目幸大(阿部亮平)は河原かすみ(玉城ティナ)に「集中力が足りなかった、管制官に思い入れがない。こっちは誇りをもってこの仕事をしているんだ」と怒鳴ってしまう。
険悪なムードを変えるため渋谷 真夢(中村 アン)が、管制チーム(真夢+夏目+かすみ)で食事することを提案。
いつもの餃子屋へと行くのですが、航空機チームの3名、粋と整備士の酒木ジェームス(尾上右近)とCAの飯塚理香子(黒川智花)が偶然にも先に来店中。
渋谷 真夢(中村 アン)と倉田 粋(玉森 裕太)がまたまた偶然にも再会してしまうという、まあ、運命的なふたりなのですね〜笑
ところがその席にて、倉田 粋(玉森 裕太)が「ひと聞き惚れ」をした相手、すなわち、マイクロバーストの時にローカルを担当していたのは、河原かすみ(玉城ティナ)ではなく渋谷 真夢(中村 アン)であることがその場にいた全員にバレてしまい、倉田 粋(玉森 裕太)もうっすらと気づいていたことを認めてしまいます。
夏目幸大(阿部亮平)は嘘をついた河原かすみ(玉城ティナ)を咎めたことから、河原かすみ(玉城ティナ)はすっかり管制官になる自信を喪失。辞表を用意するまで至ってしまいます。
倉田 粋(玉森 裕太)は一人去ろうとする河原かすみ(玉城ティナ)を追いかけ、あの日落ち込んでいた粋を励まそうと、河原かすみ(玉城ティナ)に嘘をつかせてしまったようなものだと謝ります。
河原かすみ(玉城ティナ)は粋に、渋谷 真夢(中村 アン)より私が運命共同体として相応しいと迫ります。倉田 粋(玉森 裕太)はあくまで管制官である河原かすみ(玉城ティナ)に管制官を続けてほしいとアドバイスを試みますが、河原かすみ(玉城ティナ)は、これで未練なく管制官をやめると宣言し立ち去ってしまいます。
倉田 粋(玉森 裕太)も河原かすみ(玉城ティナ)を追い込んでしまったことを後悔しながら、堪らず渋谷 真夢(中村 アン)に電話をかけるのです。
その後、河原かすみ(玉城ティナ)は辞表を握りしめ、提出しようとしますが、突然発生した悪天候による緊急ミーティングに呼ばれます。
銚子沖にある低気圧からのびる停滞前線が、東日本から西日本にかけてあり、関東甲信に局地的に1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨が降っている状況。
羽田空港でも視程が下がってきて、着陸に影響が出始めるなか・・・
機長の村井雄太郎(丸山智己)が操縦する、ロンドンヒースローからのJAL44便において、メディカルエマージェンシーが発生(機内に急病人が発生)。
成田も悪天候によりダイバート(代替着陸)できない状況となり、JAL44便を最優先で下ろすために、管制塔が慌ただしくなります。
河原かすみ(玉城ティナ)は、患者搬送の手続きや、刻々と変わる気象状況に、的確に対処する夏目幸大(阿部亮平)や倉田 粋(玉森 裕太)をサポートし、JAL44便は羽田空港へ着陸します。
緊急搬送をされたお客様の家族から御礼を伝えられた村井は、今日は管制官が良いコントロールをしてくれたから、御礼は管制官に伝えて欲しいと言います。それを聞いていた倉田 粋(玉森 裕太)は、管制塔にいる渋谷 真夢(中村 アン)へすぐに村井機長からのメッセージを伝えに行きます。
そしてついに、、、「あの時は一緒に飛んでくれてありがとう」と、想いを伝えることができる、というストーリー展開でした。
パイロット志望者にとっても緊迫する展開ですが、第三話は航空管制官志望者にとっても神回だったと言えるのではないでしょうか!
航空管制官という、パイロットにとってもかけがえのない存在。
夏目幸大(阿部亮平)が河原かすみ(玉城ティナ)に念押しする、
「これから指示を出す飛行機には実際に人が乗っている。何百人の命がかかっている」
という言葉の重さにジーンと来ちゃいましたね。
日本の国内線旅客数だけで、年間1億人(コロナ前の令和元年度の実績)の命を預かる、航空管制官の誇りと重責が伝わるストーリーだったと思います。
パイロットの飛行経験とは総飛行時間だけでなく様々な指標(基準)がある
飛行経験は、パイロットにとって大切な履歴書みたいなものです。
経験値を元に、色々なことが決まって行きます。
飛行経験の中には様々な指標があり、その中でよく使われるのが総飛行時間。
フライトタイムとも呼ばれます。
今までパイロットとして乗務した時間(正確に言えば、自家用操縦士として訓練を始めた時からの飛行時間を含む)で、飛行経験の中でもよく使われる指標の一つではありますが、実務における指標は、総飛行時間以外にも、離着陸経験、乗務時間(ブロックタイムとも言う)、飛行勤務時間などなど、他にもいろいろあります。
まずは、女性機長 喜多見 七海(吉瀬 美智子)が、粋の同期である副操縦士、岡島 瑛人(佐伯 大地)に語りかけるシーンを振り返ってみましょう。
「岡島くん、国際線が続くわね。操縦技術の向上には国内線もフライト数多くていいんだけどね。離着陸の経験も積めるでしょう?」
さらに、岡島 瑛人(佐伯 大地)と倉田 粋(玉森 裕太)の会話シーン。
岡島「なあ倉田、今月のフライト何回操縦した?」
粋 「操縦は15回かな?」
岡島「え、そんなに?」
岡島 瑛人(佐伯 大地)は、第二話からよく出てくる倉田 粋(玉森 裕太)の同期。
きっと岡島にとって倉田 粋(玉森 裕太)は良きライバルなのでしょう。
国内線乗務の多い倉田 粋(玉森 裕太)の仕事ぶりを気にしている様子が伝わってきます。
多分ですが同期の倉田 粋(玉森 裕太)よりも早く、機長になりたいのかも知れませんね。
「パイロット同期あるある」です。
パイロットの過労を防ぐために、累積乗務時間数や累積飛行勤務時間の上限が定められており、倉田 粋(玉森 裕太)や岡島 瑛人(佐伯 大地)くらいの副操縦士だと月間乗務時間が60〜80時間くらいと思われますが、粋のように国内線乗務が多いと、同じ乗務時間でも離着陸経験数が多い傾向にあり、逆に岡島 瑛人(佐伯 大地)のように国際線の乗務が多いと、経験数が減り、基準を下回る場合には、乗務とは別に、シミュレーターなどで経験数を補う必要が出てきます。
逆に、倉田 粋(玉森 裕太)はまだ国際線デビューしていないのでしょうか??
母親である倉田たまき(宮地雅子)を粋が乗務するフライトでハワイに連れて行くという約束がまだ果たされていないようですね。笑
(第二話 粋とたまきの電話シーンより)
機長と副操縦士は同じものを食べてはいけない
まずは、女性機長の喜多見と、機長の村井、そして倉田 粋(玉森 裕太)の会話シーン。
喜多見「何よ、弁当選びだって格好つけちゃって。機長はA、コーパイはB。これは暗黙の了解でしょ?」
村井 「悪しき慣習や上への忖度を最も嫌うタイプかと思っていたよ」
粋 「すみません、自分が食べたい方を選んでいました・・・」
パイロットが操縦中に何らかの理由によって操縦能力を喪失することを、インキャパシテーション(突発性機能喪失 =インキャパ)と言います。
2人で乗務するのが基本の旅客機。
インキャパが発生しても、もう一人のパイロットが操縦して、全員を地上に下ろすことが出来る仕組みです。
でも、もし、パイロットが二人とも同時にインキャパになったら、それこそお客様も含めて、全員が命の危険に晒されることになってしまいます。
同時にインキャパになる理由はたくさんあると思いますが、比較的可能性の高いものが、食中毒です。
そんな理由から、同じ便に乗務するパイロット(機長と副操縦士)は、同じものを食べない、というルールがあるので、先ほどの会話シーンとなるのです。
普通に考えれば、粋は副操縦士になって何年か経過しているのでしょうから、知らなかったでは済まされない、とは思うのですが、そんなマイペースなところもある主人公の性格を表した、パイロットあるある?なシーンなのでしょうね。笑
パイロットも航空管制官も他の職種も、目指すところは同じ安全運航
いつものお店で管制チームと航空チームによる会話シーン。
かすみ「パイロットと管制官なんて別世界だし」
粋 「いや同じだよ。俺は一緒に飛んでくれていると思っている。なんていうか運命共同体みたいな。」
〜中略〜
粋 「整備もCAも飛行機を飛ばすチーム全体がっていうことだから・・・」
倉田 粋(玉森 裕太)の独特な視点というわけではなく、パイロットは誰もが同様の視点で操縦桿を握っていると信じています。
安全運航を担うというプロ意識は、どれだけこのコラムで説明しても、パイロット志望者の方には簡単に理解できないことと思いますが、プロ意識があるからこそ、パイロット同士でも、管制官同士でも、時に職種を超えて、意見がぶつかり合ったりすることだってあります。
同じ安全を目指していたって、必ず同じ考え方になるわけではありません。
なぜならば、この世界は正解や不正解といった白黒付けられるものではないからです。
人によって正解は異なりますし、たくさんの考え方があるからこそ、守られている安全もあると言えるでしょう。
パイロットになるために、たくさん学校の勉強をされてきた方にとって、正解がたくさんあることは受け入れ難いこともあるかも知れませんが、早期に慣れて行くことが肝要です。
そして考え方が違ったとしても、互いに尊敬し合えることは素晴らしいことなのです。
私、冨村は、ありがたいことに、倉田 粋(玉森 裕太)のようなパイロット訓練生達に恵まれて、14年間今の仕事をしていますが、これからも心が温かく信念を持ったパイロットを育てて行きたいですね!
私ごとですが、パイロット志望者が集う「PILOT専門進学塾 伝統の夏合宿」引率がありましたため、この感想コラムの公開が遅くなってしまいました。
段々と遅れを取り戻して参りますので、引き続き、NICE FLIGHT!(ナイスフライト)感想コラムを楽しんでください!
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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