NICEFLIGHT!(ナイスフライト)ドラマ第1話 航空専門家による考察
パイロット志望者の皆さまこんにちは!理事長・パイロット養成コンサルの冨村です。
パイロット志望者お待ちかねのテレビドラマ「NICE FLIGHT!(ナイスフライト)」が、2022年7月22日(金)からテレビ朝日系列でスタートしました!
このブログでは、ドラマをご覧になられたパイロット志望者の方が興奮したであろう場面や、その詳細解説、実際の現場のお話などを解説する「パイロット目線 感想コラム」です。
一部ネタバレ等を含まれておりますため、本ドラマをご覧いただいてから、コラムをご覧いただくことをおすすめします。
TVerなどでも見逃し配信を行なっております。
NICE FLIGHT!(ナイスフライト)ドラマとは?あらすじ、キャスト
テレ朝のドラマのNICE FLIGHT!(ナイスフライト)は
放送時間は23時15分~で深夜枠のドラマの時間帯です。
副操縦士のパイロットとデキる航空管制官との恋愛ドラマです。
空港、空を舞台にしており、仕事、恋愛で揺れ動く30代のリアルティのある姿に共感できます。
少しだけ、あらすじを説明します。
副操縦士の倉田 粋(玉森 裕太)はフライト中で、悪天候の中、適切な判断の管制をしてくれた
管制官の声に一目惚れします。
その声が気になりながらも、困っている人を助けたい、何事にも真剣取り組む、人当たりがいい性格で
多くの問題を対応しながらも、パイロットとしての仕事の使命感を感じて仕事をしていきます。
一目ぼれした管制官の声の主は渋谷 真夢(中村 アン)で、管制官の周りからは冷静な判断対応に定評があり、
仕事では信頼を置かれていますが、プライベートは、人付き合いが苦手で、ダメ人間。
男性、女性に限らず、渋谷 真夢(中村 アン)のような方は、実際に多いのではないでしょうか。
女性機長の喜多見 七海(吉瀬 美智子)は、副操縦士の倉田 粋(玉森 裕太)が尊敬しており、
副操縦士の倉田 粋(玉森 裕太)に対し、操縦のアドバイスを行っています。
今後、喜多見 七海(吉瀬 美智子)がどうやってパイロットになったのか、主人公とのかかわりが気になりますね。
NICE FLIGHT!(ナイスフライト)ドラマは原作はあるのか!ドラマのロケ地は?
NICE FLIGHT!(ナイスフライト)ドラマは原作はなく、ドラマ用のオリジナルストーリーだそうです。
NICE FLIGHT!(ナイスフライト)ドラマの脚本を担当しているのは、あの有名な「のだめカンタービレ」ドラマの脚本を手掛けていた衛藤 凛さんです。
専門性が高い内容を含めたドラマも手掛けておりますので、恋愛ドラマ色が強い作品よりか、航空系の専門性がある部分も交えながらの
パイロット、管制官との恋愛ドラマになりそうです。
ドラマのロケ地は、主に羽田空港です。
渋谷 真夢(中村 アン)が勤務している場所は、羽田空港にある管制塔(東京国際空港管制塔)です。
JALが全面協力しており、ドラマで出てくる飛行機、登場人物が着ている服も。すべてJALになっておりますので、リアルティがございます。
JALが全面協力している過去の映画、ドラマをピックアップします。
・アテンションプリーズ(2006年)(CAになるまでの物語)
・キャビンアテンダント刑事~ニューヨーク殺人事件~(2014年)(国際線のCAがニューヨークでの殺人事件に巻き込まれる物語)
・エアガール(2021年)(戦後初のCAの物語)
JAL女性機長 喜多見 七海(吉瀬美智子さん)の登場
出典:Tv asahi 2022年7月22日(金) 23:15~ 第一話 放送
吉瀬美智子さん演じる女性機長の喜多見七海。
悪天候にも動じず、後輩である副操縦士、倉田粋(玉森 裕太さん)を上手に指導しながら、連携を取っていく姿、かっこよかったですね。
今までの日本で制作されたドラマや映画作品に、女性機長が登場したことはなかったかと思います。
確かに2022年現在、JAL(日本航空)には、少人数ではありますが女性機長が活躍しており、時代の流れを感じます。
女性パイロットの数は、日本でも年々増えて来ており、PILOT専門進学塾・シアトルフライトアカデミーにおいても、その割合が増え続けています。
パイロット業界にも、ジェンダーレス時代が到来!と言えるでしょう。
女性パイロットのコラムを以前執筆しておりますので、ぜひそちらも合わせてご覧ください。
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着陸する航空機の強敵 マイクロバースト現象とは?
NICE FLIGHT!(ナイスフライト)ドラマの第一話冒頭にいきなり登場した「マイクロバースト現象」。
果たしてマイクロバースト現象とは、どのような現象なのでしょうか。
気象庁のページに詳しく解説されておりますので以下リンクをご確認いただきたいのですが、
要約すると、積乱雲(Cumulonimbus = CBとも言う)から下降する強い気流=ダウンバーストが、地表付近に到達する時に放射状に広がり、
特に積乱雲進行方向方面に局地的に収束して吹く強風のことをマイクロバーストと言います。
もっと詳しく知りたい方におすすめ情報
旅客機など飛行機は風上に向かって離着陸したい乗り物
そもそも、飛行機は、風上(つまり風の吹いてくる方向)に向かって、離着陸をしたいと、パイロットは考えています。
空港の諸条件や気象条件によって、常にそれが叶うわけではありませんが、風上に向かって離着陸をするということは、対地速度も下がるため操縦もやり易く、滑走距離を短くすることが出来ます。
滑走路には長さの物理的限界がありますので、なるべく短く使うためにも、風上に向かうことは大切なのです。
滑走路に向かって決められた着陸経路がある
NICE FLIGHT!(ナイスフライト)ドラマ中、機長の喜多見七海と、本ドラマ主人公の倉田粋(玉森裕太さん)が操縦している、JAL900便(那覇初羽田行)は、羽田空港の22番滑走路に向けて着陸を試みていたようです。
以下画像が、実際の運航に使うことができるチャート(国土交通省航空局 AIS JAPANにて公開)です。
出典:AIS JAPAN
チャートの見方が分からなくても、着陸までのコースが事細かに定められているのだけはご理解いただけるかと思います。
そう、飛行機はどこを自由に飛んでも良い訳ではなく、あらかじめ定められたコースや進入角度にて飛行できるよう、細やかな操縦がパイロットには求められます。
風の変化が大きいマイクロバースト現象
それだけ難しい着陸操作なのですが、マイクロバースト現象が発生することにより、さらに難易度が上がります。
航空機は、進行方向から一定の気流があることで、揚力が発生して浮いている訳ですから、その気流が減少すると、揚力も減り、結果、航空機は速度、高度を失うことになります。そういったことから、アプローチスピード(例:VREF ブイレフ)も事細かに定められており、パイロットは、たったの数ノットの変化を察知して、1ノットにこだわって細かく修正操作をしているのです。
マイクロバースト現象は、風の変化が大きい現象です。
風の強さはもちろんのこと、着陸コースと積乱雲の位置関係によって、滑走路への進入途中で、風向きが急激に変わったりする訳です。
その急激とは、ほんの一瞬で20ノットくらい変化することもあります。
先ほど1ノットにこだわって操作していると言いましたので、その急激な変化が、どれだけ着陸する航空機にとって強敵か、パイロットにとって緊張するか、ということ・・・
パイロット志望の皆さまにも難しさをご理解いただけましたでしょうか。
実際に操縦訓練が始まれば、嫌というほど体験出来ますが・・・笑
IMC(アイエムシー)とは?
話は変わりまして、NICE FLIGHT!(ナイスフライト)ドラマの第一話の終盤に登場したシーン。
機長の喜多見七海と、副操縦士の倉田粋が操縦している、JAL910便(那覇初羽田行)が、羽田空港到着の直前。羽田空港にて、暖かく湿った空気が北寄りの風に冷やされて霧が発生し、視程が低下していく、と言う話です。
IMCとは、Instrument Meteorological Conditionの略で、計器気象状態のことを言います。
分かりやすく言うと、目視に頼って飛行するのに十分な視界が確保されている状態(VMC=Visual Meteorological Condition)ではないと言うことで、計器に頼って飛行しなければなりません。
CAT III(キャットスリー)とは?
「ILS高カテゴリー運用になるかも知れない。」とセリフがあったように、ILS(計器着陸装置)を用いた着陸でも、装置の精度の違い(カテゴリー=CAT)があります。
視程が低いほどに、CAT I(キャットワン)→CAT II(キャットツー)→CAT III(キャットスリー)などと、運用方式が変わっていくのですが、
CAT IIIの中でも一番精度の高いCAT IIICともなると、全く何も見えなくても、装置の基準かつパイロットがその資格を満たしていれば、
自動着陸が可能となるのですが、当然、管制塔から航空機も見えませんし、着陸した航空機も、滑走路からターミナルへ移動することすら困難になるレベルです。
お客さまの不安は様々 どこまでパイロットが寄り添えるのか?
濃霧においても、技術的に着陸出来ることは、上記説明からご理解いただけたことでしょう。
しかし、お客様が不安に感じられる理由はさまざまで、機内が騒然とするシーンもあります。
飛行機の利用にあまり慣れていない修学旅行生がお客様であれば、リアルな反応とも言えます。
パイロットを志望する皆さまも、手に汗を握る展開であったことと容易に想像できます。
倉田粋(玉森裕太さん)が、初めての搭乗で不安を感じる中学生に対して、たくさんの人たちでフライトを支えていることを説明するシーンもありましたが、現実問題、パイロットとして、どこまでお客さまの不安に寄り添えるのか、難しいこともあると思います。
でも、不安に寄り添いたいと思う、ある意味人間らしい、その気持ちを大切にしたい。そういう航空業界でありたい。
NICE FLIGHT!(ナイスフライト)ドラマには、そういうメッセージが込められている作品に仕上がっていくのかなと思いました。
感謝をちゃんと伝えたい、という部分も同じですね!
NICE FLIGHT!(ナイスフライト)のドラマが 良い作品になっていく予感しかありません!
パイロットの仕事は、安全運航の最終責任者
NICE FLIGHT!(ナイスフライト)のドラマで、最終的に副操縦士の倉田粋(玉森裕太さん)が操縦を担当し、羽田空港34L滑走路に無事着陸するシーン。
パイロットになりたい方にとっては、「やっぱり、パイロットになりたい!」と気持ちを新たにされたのではないでしょうか。
そうです、パイロットという仕事は、どんな状況であっても安全運航の最終責任を負う仕事であり、そこにどんな言い訳も通用しない世界です。
そんな重責があるからこそ、人間としての器が大きい、このドラマに登場する玉森裕太さんや吉瀬美智子さん演じるパイロットたちが、カッコイイ!!と憧れてしまうのではないでしょうか?
まとめ
NICE FLIGHT!(ナイスフライト)のドラマの第一話から、パイロットをはじめ、航空業界の皆さまの仕事ぶりが、よく再現されていた作品でした。
中村アンさん演じる管制官、渋谷真夢の発音や話し方のテンションもとてもリアルだし、冒頭で横風着陸するシーンで、ウイングローと呼ばれる、風上側の翼を傾けながら接地するシーンなど、細かい点までよく再現されているな、とドラマ制作者のこだわりを感じました。
パイロット志望者の皆さまもご満足だったのではないでしょうか!
ますますパイロットへの憧れを抱かれたことと思います。
第二話以降も展開が楽しみですね!
最後までお読みくださりありがとうございました!
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