NICE FLIGHT!(ナイスフライト)ドラマ第5話 航空専門家による考察1
パイロット志望者の皆さまこんにちは!理事長・パイロット養成コンサルの冨村です。
パイロット志望者お待ちかねのテレビドラマ「NICE FLIGHT!(ナイスフライト)」が、2022年7月22日(金)からテレビ朝日系列でスタートしました!
8月19日(金)は第五話が放送。副操縦士の倉田粋(玉森裕太)が、倉田 粋がひと聞き惚れしてしまった、航空管制官の渋谷真夢(中村アン)に対して、想いを伝えるべく、花火デートを約束するも、デート前の乗務にて悪天候により・・・と言う、倉田粋的に言うとツイている展開です。笑
いきなりですが、女性機長、喜多見七海(吉瀬美智子)のスカーフ、カッコ良かったですね!
JALの女性パイロットの制服、発表された当初は「CAと見分けがつかない」などの悪評もありましたが、吉瀬美智子さんのようなカッコいい女性が着こなせば、パイロットらしさを損なわず、なかなかイケてると個人的には思います。
女性パイロット志望者にとってポイント高くないですか?
このブログでは、ドラマをご覧になられたパイロット志望者の方が興奮したであろう場面や、その詳細解説、実際の現場のお話などを解説する「パイロット目線 感想コラム」です。
一部ネタバレ等が含まれておりますため、本ドラマをご覧いただいてから、コラムをご覧いただくことをおすすめします。
TVerやTELASAでも見逃し配信を行なっております。
乗客と向き合うと言うこと
冒頭で、渋谷真夢(中村アン)から振られたと勘違いして落ち込む倉田粋(玉森裕太)・・・笑
またまた登場!ストイックな同期パイロット(副操縦士)、岡島瑛人(佐伯大地)との会話シーンから振り返ってみましょう。
岡島「俺は、効率や定刻を重視するあまり、乗客一人一人と向き合っていないって(言われた)さ」
倉田「喜多見キャプテン?俺らのことよく考えてくれているから、期待の表れだよ」
岡島「でもそれって実際、グランド(グランドスタッフ=地上係員)やCAの仕事だろ?コックピットにて乗客と向き合うって難しいよな」
第一話でも解説した「パイロットがどこまでお客様に寄り添えるのか?」と言う話と似ていますね。
岡島瑛人(佐伯大地)は、性格のストイックさからか、〜であるべき、と言った考え方に固執する傾向にあるようですね。
その点で倉田粋は柔軟にバランスを取っているようにも感じます。
そんな岡島も、粋の性格を見越して、粋の良い部分から学びとろうとしているのだと思いますが、まだ素直になれない言い方ですよね。
まあ、「パイロット同期あるある」です。笑
パイロット志望者の皆さまも、例えばエントリーシートなど書くときに、岡島瑛人と同じ疑問、すなわち「コックピットにて乗客と向き合うとはどういうことなのか?」にぶつかっているのではないでしょうか?
答えは一人ひとりが違っていて良いですが、パイロットにだけ限らず、お客様に携わる他の職種、例えばグランドスタッフやCAも含めて、本質を見極めて、深いところまでよく考えられていないと、正しく答えられないでしょう。
機種移行訓練とは?パイロットは機種毎にライセンスが違う=機種限定資格
パイロットは乗務機種毎に機種限定資格を取り、定期的に試験を受け続けなければ乗務することは出来ません。
つまり、エアラインパイロットが、短い期間内で複数の機種を操縦することは、特殊な場合を除いて出来ないのです。
倉田粋(玉森裕太)と、岡島瑛人(佐伯大地)の会話シーンが続きます。
岡島「機種も今のナナロク(Boeing767)じゃ国内とアジアがメイン。国際線の主力期はナナハチ(Boeing787)じゃん。早く移行したいよな」
倉田「すごいな・・・俺まだそんなレベルじゃないから。もちろん世界中の人のせて飛びたいけど、今でも毎回、操縦桿握る度に緊張するしワクワクもする。それに違う機種の人とは一緒に飛べなくなるし。俺まだまだ喜多見キャプテンと、一緒に飛んでたいんだよね」
岡島「あのさ、移行訓練は同期毎に動くんだから。希望とか関係ないだろ。頼むよ」
冨村が勝手に命名→「Mr.ストイックパイロット」、岡島瑛人(佐伯大地)の向上心は素晴らしいですね。
先を考えて、次のステージそして機長となることを目標に「少しの余白も許さない!」っていう感じが溢れ出ています。
その点では、倉田粋も岡島瑛人を心から尊敬しているように感じますね。
移行訓練が同期毎に動くと言うのは会社(JAL)内の話だと思います。
どの会社でも同じわけではありませんし、必ずしもそのルールがずっと適用されるわけではないでしょう。
ただそういった取り組みを通して、同期の絆を強く意識させて、途中脱落者(辞職)を減らしたい、といった会社の方針が分かりますね。
それだけパイロットであり続けるには強靭な精神力が必要であり、それは安全運航の最終責任を取るという重責を担うと言うことなのでしょう。
岡島瑛人のストイックさも必要な要素ではありますが、素晴らしいとも思う反面、バランスを上手に取らないと、あとで苦労しそうな展開ですね。
その点はいずれまたコラムに解説して参りたいと思います。
花火デートへ向けてパイロットらしい慌ただしい1日が始まる
そしていよいよ花火デートの当日!
倉田粋(玉森裕太)は、機長の喜多見七海(吉瀬美智子)と共に、羽田発福岡行きJAL319便(13:00-14:45)、そして復路便JAL320便(16:00-17:50)の後に羽田に戻り、18時に真夢と展望デッキで待ち合わせて、19:05発の中部行JAL209(花火フライト)に乗る予定でした。
羽田での時間は、1時間15分あるとはいえ、乗務終わって遅くとも45分後には待ち合わせ場所の展望デッキに行き、想いを伝える間もなくセキュリティを通過して、ゲートまで行かないといけないので、数分の余裕もない感じ。
倉田粋は、きっと間違いなく、羽田到着ON TIME(オンタイム=定刻)を目指して、全ての行程、無駄のない動作(先読み)を考えていたのだろうと、想像できます。
・・・ならば、待ち合わせ場所は、展望デッキでなくて出発ロビーでいいじゃん、とかいう夢の無い話はこの際置いておきましょう・・・笑
倉田粋は渋谷真夢に「絶対に行く!」って宣言しちゃっていますからね。
そりゃ気合も入ることでしょう。そんな感じですから、機長の喜多見七海に「あ、約束あるんだ〜」なんて、すっかりバレちゃっています。笑
女性機長の直感、恐るべし・・・
以下、倉田粋と喜多見七海の出発前の会話シーンから
倉田 「福岡空港付近の山岳エリアで雷雲が発生し始めていますね」
喜多見「あのあたり、夏場は雷雨が頻繁に接近するのよね。おまけに滑走路は一本しかないし。手強いな」
倉田 「天候の急変に備えて燃料を多めに積んでいますし、お客様には引き返しまたは近隣空港へのダイバートの可能性をご案内済みではありますが」
おいおい、ですね。真夢とした約束、、、雲行きが怪しくなってきましたね
ON TIME (オンタイム)とは?あらゆる無駄を減らすことに繋がる
ON TIME(オンタイム)とは、英語で定刻の事です。
倉田粋が地上研修時代に在籍していた元職場であるグランドスタッフ(地上係員)たちもON TIMEで喜んでいますね。なぜでしょうか?
日本人の特性とも言えるのかも知れませんが、日本の航空会社では時間を守ることをとても大切にしています。
そして、海外の常識で考えれば、少し過敏なくらいなのかも知れません。
どうして日本の航空会社は時間を守るのでしょうか?
あくまでも航空会社的な視点で、「ON TIME(オンタイム)出発へのこだわり」について解説します。
定時運航率のデータには、日本の場合は国土交通省の統計から、英国SIRIUM社やOAG社など各調査会社のデータまで、さまざまなタイプが存在します。
例えば航空会社の種類・規模・国やエリア・集計した期間など、データ抽出の線引きを経ることで、データ毎に一位の会社があるため、少しややこしい話になることがあるのですが、国内では、例えば、スカイマークやソラシドやフジドリームなどが、定時運航率が96%〜98%などだったりします。これは世界的にみても驚異の数字です。
JALやANAもそれに続く定時運航率の高さを誇っています。
また羽田空港も、世界で定時出発率トップの空港にも選ばれており、日本の航空会社が、さまざまな工夫を凝らして、いかにオンタイムを競い合っているかご理解いただけたかと思います。
日本には狭い国土に多くの人がひしめき合って暮らしています。
少しでも一人ひとりが快適に暮らすためには、互いに協調してルールを守り、無駄を極力排除する=効率化する必要があります。
これは航空会社でも同じことが言えます。
もしご搭乗のお客様1名のゲート到着が遅れ、結果、出発が3分遅れたとします。
出発機の遅れは、その機だけの遅れでは済まないです。
なぜならば羽田空港のような混雑空港は、航空機が集中しますので、遅れた分、もしかしたら、後の時間の他の便が、連鎖的に少しずつ遅れていく可能性があるからです。
また、出発が遅れた便に乗っていた、また別の搭乗客が、目的地の空港で別の便への乗り継ぎがあったとします。
預け荷物などがあれば、載せ替える必要もあります。
その次の便にも遅延が影響する可能性がありますし、お客様の預け荷物だけ置いていかれることだってあります。
航空会社はそのお客様に対して約款に従い、金銭的な補償をする場合もあります。
航空便は世界規模で繋がっているわけですから、遅れは次々と世界規模で連鎖していく可能性があるのです。
世界旅行の経験がある方は、便の遅延やロストバゲージの多さなど、驚愕された方も多いのではないでしょうか。
2022年の今年は、世界ではコロナからの急回復もあり、従業員不足などもあって遅延が常態化してきていると聞きました。
日本はまだ8月の実績が出てきていませんが、良い数字なのではないかと予想します。
話を戻して、3分間、出発遅延した分、航路上でフライトを工夫して遅れを取り戻すことにしましょう。
方法は、近道をしたり、スピードを上げたり、あるのですが。
パイロットの判断だけで勝手に近道することは出来ませんが、管制官から許可が得られれば可能かも知れません。
ではスピードアップはどうでしょうか?限度はありますが、余裕を持たせて巡航していれば、少しだけなら可能です。
でもその分燃料を無駄に消費してしまいます・・・
航空機は自動車などと比較して大きい(重い)ですから、その分、消費燃料は多くなります。
(厳密に、ひと座席あたりの消費量に換算すれば、自動車と比較してさほど非効率というわけではない)
遅れてしまった乗客の座席分だけ遅れを取り戻すわけではないですから、航空機全体何百人分の遅れを取り戻すために、燃料を余計に使うため、結果的には、かなりの量を無駄に使うことになります。
これは、地球温暖化など、環境保護の観点からも問題がありますし、もし遅延が他の便にも連鎖し、世界規模で無駄に発生していると考えたら、大問題なのではないでしょうか?
この無駄の徹底的な排除という部分で、多角的に考えて、工夫を凝らした結果が、日本の各エアラインの定時運航率の高さとして表れているのかも知れませんね。
定時運航を守るための多角的な考え方は、世界に誇るべきものであり、最も効率的な公共交通機関を守る現場の一人ひとりの地道な努力が、もっと賞賛されるべきだと冨村は思います。
何百人の乗客と、その乗客を待つ人たちの人生を預かって飛ぶということ
倉田粋(玉森裕太)が、世界で活躍するバイオリニストの乗客、仙崎薫(田口浩正)との出会いを思い出しながら、喜多見七海(吉瀬美智子)にしみじみと話したシーン
「飛行機って、何百人っていう人の命はもちろんなんですけど、その人やその人を待つ人たちの人生も乗せて飛んでいるんだなって、その時思ったんです」
世界的バイオリニストである仙崎が、地元福岡の子供たちのために演奏会を開く理由、そして仙崎の演奏を心待ちにしている子供たちを待たせないように、仙崎がどうしても便に乗りたいと話す姿に、倉田粋は、仙崎を通して、仙崎を待つたくさんの子供たちの笑顔まで想像して見えたのでしょうね・・・
さいごに
はい、今回のコラムはここまで!
え?一番盛り上がったダイバートの話が解説されていないって??
そうですよね!笑
第五話は情報量がありすぎるため、2回に分けさせていただきます。
引き続き執筆して参りますので、もうしばらくお待ちくださいね!
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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