パイロットを目指すのに航空留学は有利?近道なのか?
海外の方がパイロットの免許を取得しやすい、費用も安い、言語の壁がクリアできればパイロットになりやすいと思っている方が多いのではないしょうか。
免許取得のための航空留学は、かえってエアラインへの道を狭めてしまう可能性がございます。
航空留学理由が必ずしも有利ではない理由を解説していきます。
ぜひ、航空留学の参考情報としてご検討ください。
航空留学する理由は主に以下の2つが考えられます。
- パイロットの免許を短期間かつ低予算で取得
- 留学後、パイロットとして海外で就職
航空留学後に日本へ帰国して、日本の免許を追加取得し、日本のエアラインパイロットを目指す方は1.の理由で航空留学を検討されていると想定されます。2つの理由が、現状、想定通りではない理由を解説していきます。
パイロットの免許取得が短期間かつ低費用で出来ない可能性あり
短期間かつ低費用でパイロットライセンス取得が出来ない可能性の原因は以下の3つです。3つの詳細を解説していきます。
- 海外が国内のよりも免許取得の訓練内容が少ない・訓練の質が不安定
- 航空留学後、日本の免許書き換え訓練がすぐに受けられない状況
- スケジュール通りならない場合、費用は高額
海外が国内のよりも免許取得の訓練内容が少ない・訓練の質が不安定
私大航空操縦など、日本国内の訓練機関は通常、小型機訓練の段階から中型機・大型機を操縦する前提で訓練カリキュラムが進みます。
それに対し、海外の訓練機関では小型機は小型機の訓練のみで、中型機・大型機の操縦を前提とした訓練は行なっていないのが普通です。
なぜ、海外と日本国内で訓練内容に差が出ているのでしょうか。
主な航空留学先であるアメリカやカナダといった国は日本と比べて国土・農地が非常に広いため農薬散布などの生活において航空機操縦の必要性があり、生活必需品である小型機、それに伴うライセンスは車と自動車免許と同じような位置付けとされています。最初からエアラインを目指している人ばかりでないのが特徴です。
一方、日本は飛行機を所有することは一般的でなく、ほとんどの場合、将来的にエアラインパイロットを目指しており、そのためにライセンスを取得したいから入学(入校)したという方が一般的ですので最初から中型機・大型機操縦を視野に入れた訓練を実施しているのです。
また、国内の訓練機関の教官は退職したパイロットが務めている場合が多いのですが、海外の訓練機関ではライセンスを取得し、まだ日の浅い、経験不足なパイロットが教官を務めている場合が多いです。当然、経験の浅い教官に教えを受けてしまうと変なクセがついてしまったりして技量に不安が出ます。
こういった理由から、国内エアラインは海外でライセンスを取得してきた志望者よりも国内で訓練を終えた志望者を採用したがる傾向があります。
航空留学後、日本の免許書き換え訓練がすぐに受けられない状況
日本のエアラインパイロットを目指す場合、日本のライセンスに書き換え訓練を行うために、帰国後は日本で訓練を行います。
しかし、2023年現在、日本はパイロット(機長)不足により、訓練教官の数も不足しています。
また、日本は国土が狭く、基地も多いことから、訓練空域が不足しており、訓練数には限界が来ています。
私立大学の大半が、訓練後半を日本にて実施していることも、こうした現象を加速させているのです。
日本のフライトスクールでは、訓練待ちが多発しており、留学を含む他スクールからの移籍を受け入れることが出来ないフライトスクールも出てきています。
航空留学を検討中の方は、まず先に、日本のフライトスクールを訪問し、航空留学後も待機期間がなく受け入れてくださる確約を得てから、留学されるべきではないでしょうか。無論、そんな数年も先の確約をくださるスクールはないはずです。
スケジュール通りならない場合、費用は高額
航空留学の斡旋会社が使う文句として、航空留学は安くライセンスを取れるとありますが、航空留学の斡旋会社が作成したスケジュール通りに進んだ場合であり、実際には教官や別の訓練生の予定、天候や整備などの理由で斡旋会社が作成したスケジュール通りにはいきません。
更にこうした会社の見積もりでは、現地での生活費やその他発生する費用が含まれていない場合が多く、留学してみたら結局数千万円かかってしまい、私大や航大を目指した方が安いことはよくあります。
加えて昨今は円安ですからこうした傾向はより強まっていると思います。
パイロットとして海外での就職は困難
海外でパイロットとして就職するには、永住権、労働ビザ等が必要です。
アメリカの航空会社については、労働ビザのサポートを一切しません。
すなわち、外国籍パイロットの直接雇用はしていない、ということになります。日本国籍のアナタがアメリカでエアラインパイロットになるには、グリーンカード(永住権)を取得するなどが必要です。
そしてそのグリーンカード取得は、宝くじに当たるようなものだとも言われています。
ちなみに、PILOT専門進学塾の先生にも、アメリカのフライト教官が在籍していますので、いかに海外でパイロットをやることが厳しいのか、お話を伺うべきと考えます。
海外問わず、エアライン会社が常に欲しているのは航空運行の権限がない副操縦士ではなく、権限がある機長なのです。
機長クラスですと海外エアラインからも採用されやすいですが、副操縦士、有資格者クラスの場合は、自国の国籍保持者が優先的に採用されます。
アメリカもカナダも日本同様、エアラインパイロットを目指す人が多い中、他国籍の人間を採用している枠はありません。
ちなみに、今は日本に住んでいるけれど、外国籍を持っていてその国のパイロットになる予定の方は、チャレンジして頂いても大丈夫だと思います。
例外を言えば、フィリピンやパラオなどの国は外国人でも積極的にパイロットの採用を行なっております。
しかし、フィリピンやパラオなどの国々は、パイロットを目指す人(目指せる人)がそもそも少なく、交通インフラを維持するためにも求人は多いのですが、労働条件は悪いです。
日本人がパイロットになりやすい国は、やはり日本!?
日本ほどエアラインパイロットになるための選択肢が多様かつ、金銭的に恵まれています。
日本でエアラインパイロットになるためには、大きく分けて3つ手段があります。
<エアラインパイロットになる手段(※)>
- 自社養成パイロットになる
- 私立大学パイロット養成コースに進学
- 航空大学校に進学
※民間フライトスクールは、エアライン直結のプログラムではない、つまり、趣味でパイロットを目指す人も受け入れているので、今回は除外致します。
自社養成、私大航空操縦、航空大学校は入ることが出来れば、80%〜90%でパイロットになることが出来るでしょう。その分入るのが難しいですが・・
日本でパイロットになる手段1:自社養成パイロットになる
1つ目の手段、自社養成パイロットになることについて解説します。
自社養成パイロットとは、採用されたエアライン会社の社員として、給与を頂きながら、飛行訓練を受けることができるシステムです。
ちなみに、自社養成パイロットのシステムがある国は、世界的に見ても少ないのです。
また、自社養成パイロットに近いシステムがある国でも、自己負担ゼロどころか給料がもらえるのは日本だけなのです。
しかし、自社養成パイロットの倍率は優に100倍を超えますので、現実的な選択肢ではないと考え方も多いでしょう。
日本でパイロットになる手段2:私立大学パイロット養成コースに進学
2つ目の手段、私立大学パイロット養成コースに進学することについて解説します。
私立大学パイロット養成コースの歴史は比較的浅いですが、エアラインと直結した育成プログラムを採用しており、高い就職率から近年人気の選択肢です。
例えば、自社養成は倍率が高すぎるので、一度大学を卒業したが、私立大学パイロット養成コースに入り直す方もざらにいらっしゃいます。
一方で、ハードルになりうるのは、訓練費です。一般的に2000~2500万円ほどの訓練費が必要となります。
ただ、お伝えしておきたいのは、私立大学パイロット養成コースの訓練費は全額自己負担ではありません。(私大大学パイロットコースは自費訓練であると勘違いされている方があまりに多いです。)
本来、フルライセンス取得には5000万円近くかかると言われておりますが、私立大学の助成金や寄付金などによって、半額にディスカウントされているのです。
それでも高額な費用であることは間違いないので、サポートローンや優秀者には奨学金が用意されています。
また、後に紹介する航空大学校には年齢制限がありますが、私立大学パイロット養成コース(特に崇城大学)は、基本的に年齢制限はなく、20代後半までなら、チャンスがあることも嬉しいポイントです。
日本でパイロットになる手段3:航空大学校に進学
3つ目の手段、航空大学校に進学することについて解説します。
私立大学パイロット養成コースにサポートがあるとはいえ、金銭的理由から諦める方もいらっしゃると思います。
そんな方にオススメなのが航空大学校です。航空大学校の訓練費は500万円ほどです。これほど訓練費が安く済むには事情があるのですが、ブログに書けない内容ですので、割愛させて頂きます。
海外にエアラインパイロット直結のプログラムがほとんどない?!
日本のエアラインパイロットになる方法が多様かつ、いかに恵まれているかを解説しました。一方で日本以外での、エアラインパイロットになる方法はどういったものがあるのでしょうか?
海外にはエアラインパイロット直結のプログラムはほとんどありません。
たとえば、アメリカではエアラインに応募するための最低の飛行時間は1500時間と言われています。(ちなみに日本は250時間です。)この飛行時間を稼ぐための一般的な方法は飛行教官をすることです。
そこからチャーター機のパイロットなどから経験を積み重ね、時間をかけてエアラインパイロットになっていきます。ちなみに、この一般フライトスクールからエアラインパイロットになるという道はかなり過酷です。
民間フライトスクールスクールからエアラインパイロットに行く道がいかに過酷なのかお分かりいただけましたでしょうか。
パイロットになる入口が広い分、キャリアを積み重ねる、つまり、エアラインパイロットになろうとすると、競争が激しいということになります。
海外にエアラインパイロット直結のプログラムは数少ない!費用は高額
数少ないが海外にエアライン直結のプログラムもございますので、紹介します。
例えば、アメリカの場合、エンブリーリドル大学やノースダコタ大学などがそれに当たり、日本の私立大学パイロット養成コースと同じく、大学生からエアラインパイロットを目指すことができます。
ただし、費用は日本の倍以上の5000万円から6000万円ほどの学費や訓練費が必要となります。
なぜこれほど高額な費用が必要になるのかご説明致します。
アメリカのパイロット養成大学では日本の約6倍の時間をかけて、訓練を行うのでそれに伴い訓練費も高額となります。
日本ではどの養成コースでも250時間で訓練を行っていますが、アメリカを含む、世界標準では、1500時間です。(日本の訓練時間が短いからと言って、パイロットの質が低いという訳ではありません。むしろシラバスは洗練されており、訓練生の努力は必須ですが、1500時間の経験値を250時間で得ることが出来ます。)
優秀な訓練生であれば、航空会社からお声かかり、1000時間前後の訓練時間で青田買いされることもあるようですが、それでも日本の4倍の訓練時間ですので、訓練費用も訓練時間に比例して高くなります。
日本のパイロット養成大学の訓練費は確かに、2000~3000万円と金額としては高いですが、アメリカのパイロット養成大学に比べれば圧倒的に安価です。
以上日本でエアラインパイロットを目指せる事が、いかに恵まれているかをご説明致しましたが、それでも海外のエアラインパイロットになりたい方や、諸事情から日本のパイロット養成システムが合わない方もいらっしゃると思います。
ご自身の状況に合わせて、ご検討いただけますと幸いです。
まとめ
・航空留学で免許取得後、日本の会社を目指す道
・航空留学で免許取得後、その国で採用される道
どれも非常に厳しい状況でございますので、免許取得のための留学(航空留学)は、かえってエアラインへの道を狭めてしまうと言えるのではないでしょうか。
日本国籍をお持ちのパイロット志望者は、私はとてもラッキーだと思っています。
なぜならば、日本ほどに、パイロット志望者に平等にチャンスをくれる国は他にないからです。
そこまで日本人は恵まれているのに、どうして海外のエアラインを目指すのか、どうしてより困難な道を選択するのか・・・困難だと知っていながら目指されるのなら素晴らしいと思います。
しかし、それを知らずして、その道を選択されているならば、これはとんでもないことではないでしょうか。
ちなみに、航空留学ではなく、訓練をしない留学であれば、むしろ強くお勧めしたいところです。
日本のエアラインが求める英語力は、とても高いです。ちなみに、冨村は航空留学を全て否定しているわけではありません。
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