ステイ先で学ぶ政歴シリーズ 海外編1〜スリランカ〜第2章
スリランカは日本の命の恩人
多くのスリランカ人にとって初めての日本との出会いは第二次世界大戦でした。
当時のスリランカはセイロンと呼ばれ、イギリスの植民地でインドの南に位置する島であることから、イギリスのインド洋支配の重要拠点で、巨大な軍港と飛行場を有する要塞のような島でした。
第二次世界大戦中、日本はインド方面へ進出すべく、イギリス軍の重要拠点であったセイロンに展開していた英国東洋艦隊の撃滅を目指し、日本の空母艦載機でコロンボ港、トリンコマリー港を空襲し、イギリス艦船を攻撃しました。その後、迎撃に出てきた英国東洋艦隊も日本艦隊に敗北し、撤退しました。
この、同じアジア人国家の日本に一方的に空襲を受けたり、戦いに破れて逃げていくイギリス軍の姿は、数百年間の植民地支配を受けて、独立や自分たちの可能性を完全に諦めていたスリランカ人にとってかなり衝撃的だったといいます。
その後、初戦こそ優勢を保ったものの、最終的に日本は敗北しました。敗戦という不幸のドン底の日本とは逆に、戦争によって国力を削がれたイギリスは、植民地を維持できず、独立の機運が高まったスリランカは独立を果たしました。
その時、戦勝国の国々はいかに日本の責任を問い、賠償金を取るか、更には日本をどの様に分割統治するかという事まで話し合われていました。
そんな中迎えた1951年9月8日サンフランシスコ講和会議。
戦勝国の国々の代表は各々日本に対し厳しい言葉を浴びせ、日本は戦勝国達による分割統治となってしまうかと思われました。
そこで立ち上がったのがスリランカ代表のJ.R.ジャヤワルダナ氏。
独立したばかりのスリランカ(当時の呼称はセイロン)も空襲を受けた被害国として会議に呼ばれていたのです。
J.R.ジャヤワルダナ氏は日本に対する罵詈雑言飛び交う中、この様に演説しました。
「私は、この前の戦争の最中に起きたことですが、アジアの為の共存共栄のスローガンが今問題となっている諸国民にアピールし、ビルマ(ミャンマー)、インド、インドネシアの指導者の或人達がそうすることによって自分達が愛している国が開放されるという希望から日本の仲間入りをした、という出来事が思い出されます。セイロンに於ける我々は、幸い侵略を受けませんでしたが、空襲により引き起された損害、東南アジア司令部に属する大軍の駐屯による損害、並びに我国が連合国こ供出する自然ゴムの唯一の生産国であった時に於ける、我国の主要産物のひとつであるゴムの枯渇的樹液採取によって生じた損害は、損害賠償を要求する資格を我国に与えるものであります。我が国はそうしようとは思いません。何故なら我々は大師(仏陀)の言葉を信じていますから。大師のメッセージ、「憎しみは憎しみによっては止まず、ただ愛によってのみ止む」。私たちは賠償請求権を放棄します。我々は日本人に機会を与えてあげねばなりません。」(一部抜粋)
J.R.ジャヤワルダナ
この演説が終わった瞬間、会場は拍手に包まれ、その後は罵詈雑言は一切無くなり、分割案は廃案にされ、日本は晴れて国際社会に復帰することができたのです。
サンフランシスコ講和会議に参加していた、首相、吉田茂は、ジャヤワルダナ氏の演説に感動し、日本が永遠に返しても返しきれないほどの恩をいただいたと発言したと言われています。
その後、ジャヤワルダナ氏はスリランカの大統領となり、日本との友好関係構築に尽力し、最期亡くなる際、「死後も祖国スリランカと日本をこの目で見続けていきたいので、死後、右目をスリランカ人に、左目を日本人に移植してほしい。」と遺言を残し、亡くなりました。
その後、遺言通り、右目は角膜をスリランカ人に、左目の角膜は日本人に移植されました。
この大恩は、当時の日本の政府に大きく響き、スリランカが困っていたら必ず助けようと肝に命じました。
また、吉田茂首相が外務省出身だった事もあり、外交の重要性カテゴリの中では、安全保障の面ではほぼ無関係だし、経済的結びつきもそこまで大きなものではないのにも関わらず、日本の外務省では現在でもアメリカやイギリスと同レベルの重要国家として位置付けられています。
これが理由で日本は今もスリランカに対して支援の手を緩めないのですね。
第3章に続く・・・
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