〜あの日見た飛行機雲〜 国際線機長40年の想い 第二章

偉人たちの飛行機雲

自分の飛行日誌を振り返る前に、過去の偉人のあまり広くは知れ渡っていないエピソードを辿ってみたいと思います。

最初にライト兄弟が飛んでから何年というように航空の歴史が語られて来ていますが、僅か120年足らずに過ぎません。
誰よりも先に飛んだ、というパイオニア精神と実行力は後に続く航空の歴史の中に引き継がれています。

また飛行機の進歩と、それに係わって来た周りの人達の足跡も魅力に溢れています。

ライトフライヤー号英国に

皆さんは「ライトフライヤー号」はご存知でしょうか?

ライトフライヤー号は、かのライト兄弟によって作られた、世界初飛行に成功した航空機です。

ライトフライヤー号が1903年12月17日、ライト兄弟の母国であるアメリカの空を飛んだことは米国人の誇りとなっています。

しかし、後に米国人は衝撃を受けることになります。

1930年前後に英国に観光などで訪れた米国人は、ロンドンの科学博物館が展示しているライトフライヤー号を見て驚きました。
「なぜライトフライヤー号がこんな所にあるのか?」それは大きな世論となって米国の「スミソニアン協会」に向っていきました。

当初ライト兄弟は米国スミソニアン協会に居た教授のラングレー氏に教えを受けたりしながら、飛行機の開発競争に加わっていました。
しかし、ラングレー教授の方は当時何回か試験飛行の失敗を重ねていたのです。

1903年のライト兄弟の初飛行の後、徐々に飛行機が兵器として注目を集めて来た事もあって、飛行技術に関する特許取得は争いや妬みの対象になっていました。

1908年から1909年初旬にかけてライト兄弟は、米国だけでなく仏ルマンの自動車会社の実業家レオポルド氏の招きで訪れライトフライヤーを改良し飛ばしています。
また、1911年にも再度兄弟でフランスを訪れました。

ラングレー氏の後を継いで協会会長の地位にいたチャールズウォルコット氏はライト兄弟の偉業を認めず、スミソニアン博物館航空史に「ライトフライヤー号」を一切記載しませんでした。

もう一人の腕の良い飛行家のグレンカーチスは航空会社を設立し、何かとライト兄弟と特許権の争いをしていました。
兄弟のパイオニアの地位を否定すれば特許争いに有利になると考えていたカーチスとウオルコットは、1914年にラングレーのエアロドローム(ライトフライヤーと初飛行を争った機体)の再飛行実験を成功させました。

実際にはカーチスの手で30箇所以上も改造され全く別物といわれる飛行機になっていました。

ウォルコットはスミソニアン協会への報告に「初めて飛べる飛行機を作ったのはラングレー」と声明を出し、1903年当時の形状に戻したエアロドロームをなんと、ワシントン国立博物館に「人間を乗せ飛行可能な世界初の飛行機」と表示し展示していました。

既に兄ウイルバーを亡くしていた弟オービルは当然抗議しましたが協会は無視し年次報告にも「初飛行はラングレー機」と声明文を繰り返し掲載していました。

日の目を見ることなくMIT(マサチュセッツ工科大学)の倉庫に保管されていたライトフライヤー号にロンドンの科学博物館からの展示希望が寄せられ1928年ライトフライヤー号は英国に渡っていきました。

しかし、既に大きな世論となっていたライトフライヤー号をスミソニアン協会はいつまでも無視出来なくなっており、ウオルコットの死後1928年に会長職を継いでいたチャールズアボットはオービルと面談し、ライトフライヤー号を米国に戻すよう要請しました。

「歴史を正しく修正する」これがオービルの唯一の条件でした。

アボットは妥協点を見出そうとしたがオービルは譲らず、遂に1942年スミソニアン協会側が声明を出し、ライト兄弟の偉業を認め1914年の再飛行実験を否定して、兄弟に陳謝しました。

これによりオービルはライトフライヤー号を米国に戻すことに同意したのです。

第二次大戦の混乱を経てワシントン国立博物館に展示されたのは1948年12月17日、初飛行から45年後の同日のことでした。

しかしながら展示除幕式にオービルの姿はありませんでした。
同年の1月30日に彼は亡くなっていました。

1942年オービルは自動車王ヘンリーフォードに対して、自分が飛行機を発明したことを悔いる内容の手紙を送っています。

また1943年にはアメリカ特許局設立150周年の式典で、「最近100年間の10大発明は何か?」と問われたことに、あえて飛行機をその中から除外して答えています。

当時は自動車ほど十分に発達しておらず、戦争兵器などに使われたのも含めて人命が多数犠牲になったことへの後悔もあったと思われます。

ただ、今日の飛行機の進歩を目にしてどう思ったか、もう一度ライト兄弟にたずねてみたい気がします。

第三章に続く・・・

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